「練習が嫌いなわけではないんです。でも、他の人に引っ張ってもらったり、追い詰められないとやらない。いつも、自分で自分を逃げられない場所に落とし込むつもりで、大会にエントリーしています」
走ること自体は好きなのだが、トレーニング内容を自分で考えるのは苦手と言う。高校までは決められた厳しいトレーニングをこなしてさえいれば成績がついてきた。しかし、大学へ進学し少人数の陸上部に入ると、自主性を求められる部の方針に戸惑う。
「自分の練習方法がわからないまま、タイムだけが落ちていきました。いつしか走る楽しさすら見失ってしまい、ついには陸上から離れてしまいました」
栞奈さんの父親・政宏さんも実は現在MONTURA のサポートアスリートである。親子揃ってトレイルランナーというのは珍しい。当時、走ることを楽しめなくなった栞奈さんを、家族は温かく見守っていた。
「父のおかげで、駅伝、山、と少しずつ走る楽しさを思い出せるようになりました」
今までの陸上競技とは違う、トレイルランの世界で再び走り出す、何か決定的な出来事があったのだろうか。
「父の影響で見た海外レース、特にUTMB(ウルトラトレイル・デュ・モンブラン)の美しい景色に、強く心を奪われました。いつかここを走りたい!と。その夢を実現するため、今はロングレースの経験をたくさん積んで行きたいと思っています」大会でも好成績を残し、着々と夢の実現に向かって進んでいた矢先にコロナの災難はやってきた。その影響で各大会開催も危ぶまれ、計画は大いに狂い出す。
「海外で100 マイルレースを走れる機会をいただいたんです。でも、レースに参加できたとしても、コロナで隔離にかかる日数も必要になる。休みだってそんなに取れる訳でもないので、泣く泣く出場を諦めました」
自分自身の理由ではなく、積み上げるべき経験のための行動を規制され、目標に近づけない悔しさ、はがゆさは、察するに余りある。
「自粛期間中は近所の河原を走るくらいしかできなかったので、朝早起きする習慣がつき、仕事前にひと走りする毎日でしたが、どこか味気なかった。人ともずっと会えなかったので、久しぶりに友達と食事できたときはあまりに楽しくて…涙がでるくらい嬉しかったです」
制約のある暮らしを強いられるなか、人と会う大切さを改めて感じる日々だ。今後も夢に向かって走り続けられそうだろうか。
「何事もそうですが、やりたいことがあったとしても、楽しくないと続けられないと思うんです。せっかく始めたのに、苦しさのあまりやめてしまったら、勿体無いですよね。どうにかして、楽しむ工夫をしないと」
楽しくないと─と栞奈さんはよく口にする。MONTURA を身につけるのは、楽しく走るための一助になっているだろうか。「MONTURA は大好きなブランドです。軽くて動きやすくて着心地もとてもいい。黒系のボトムスに合わせやすい綺麗な色のトップスが多いのも嬉しいです。やっぱり走るときもお洒落して、楽しんだほうがいいですからね」